ユニゾに融資する6割が地銀、65行の損失リスク握る借り換えの行方

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Photographer: Akio Kon/Bloomberg Photographer: Akio Kon/Bloomberg

みずほフィナンシャルグループと関係が深かった取引先で、昨年6月に非上場化した不動産会社、 ユニゾホールディングス(HD)への融資総額約1960億円のうち、約6割を地銀が占めることがブルームバーグの入手した資料で分かった。同社は銀行団に200億円の借り換えを要請しており、取引先地銀への影響が懸念されている。

同社が昨年12月、銀行団に提出した借入金残高表によると、同9月末時点の取引金融機関は全部で88社に上る。内訳は地銀65行、県信連12団体、生損保6社など。ユニゾが北米で保有する賃貸用物件向けにローンを提供する米国の保険会社と銀行を除き、国内金融機関では 北國銀行の残高が一番多い。次いで神奈川県信用農業協同組合連合会(県信連、JAバンク)、 西日本シティ銀行と続く。

地銀の融資総額は約1124億円で、県信連は約317億円となっている。この二業態で、ユニゾの借り入れの7割以上を占める。

ユニゾ向け融資残高上位(20年9月末) 金額 残高や担保の有無など 北國銀行 84億円 個別案件にコメントせず 神奈川県信連 70億円 個別案件にコメントせず 西日本シティ銀行 67億円 個別案件にコメントせず 武蔵野銀行 60億円 個別案件にコメントせず 愛知県信連 57億円 個別案件にコメントせず

ブルームバーグが入手した昨年12月の同社の資金繰り計画案によると、ユニゾは同12月、取引金融機関各社に今年5月までに200億円の借り換え(リファイナンス)を実施したいとの意向を文書で伝えた。

200億円のリファイナンスが実行できなければ、9月末には手元現預金が22億円に減少する見通しが示されている。11月には100億円の社債償還を控えていることから、ある取引銀行の幹部は、厳しい資金繰り状態にあるのは間違いないと分析する。

ユニゾが関東財務局に提出した半期報告書によると、昨年9月末の有利子負債の総額は約3000億円。1960億円の借り入れのほかに、1040億円の社債(昨年11月に50億円が償還されたため、現在は990億円)がある。借り入れのうち、無担保は1470億円に上る。

ユニゾの経理部は、ブルームバーグの取材に対して、日々金融機関と話をしているが、コメントすることはない、とした。

みずほの信用

ユニゾのメインバンクは、もともとみずほ銀行だった。同社は旧日本興業銀行系の常和不動産を母体とし、当時から社長や役員を受け入れていたほか、主要株主にもみずほの親密先が名を連ねていた。しかし、複数のみずほ銀関係者によると、2019年12月末時点で463億円と残高が一番多かったみずほ銀の融資は、昨年7月にゼロとなった。みずほ幹部によると、ユニゾからの返済の申し出で完済された。

みずほ銀行広報室は、事実関係についての認否は差し控えるとした上で、ユニゾに対して既存債権者の保護を要請してきたが、みずほ銀として融資の全額返済を要請した認識はないとした。

地銀の中には、当期利益を超える融資をしている銀行も少なくない。融資額が21年3月期の当期利益計画を上回るのは10行以上に上る。仮にユニゾ向け融資の保全を行わないまま取り立て不能になれば、一部の銀行は赤字に陥りかねない。

ある取引先地銀の役員は、ユニゾ向け債権ついて、無担保で引き当てもしていないと明かした。同社がみずほの親密先だったことから、みずほの信用で貸していたためだという。

一方、取引銀行の関係者によると、 三菱UFJ銀行や りそな銀行、 三井住友信託銀行などの大手行は非上場化以降、次々と取引を解消した。複数の大手行幹部によると、返済期日の到来や、ユニゾが担保不動産の売却を進めたためだという。

事情に詳しい関係者によると、ある大手行はユニゾに対して期日前返済を要求し、全額回収した。借入金残高表によると、昨年同9月末時点で貸出が残っている大手行は35億円の あおぞら銀行と4億円の 三井住友銀行の2行のみ。複数の取引銀行幹部は、2行は融資のほぼ全額に担保を設定していることを明らかにした。

大手行が相次いで取引銀行団から姿を消し、貸し出しの比重が地銀に偏る構図となっている。現状の銀行団の構成について、過去にユニゾに融資していた大手行の役員は、88社という多数が参加する銀行団をまとめるメインバンクが存在していないことが不安要素だと説明する。

通常、事業会社に経営不安が生じれば、メインバンクが資金繰り支援のために動く。重大な局面では事業会社と再建計画を策定して銀行団を取りまとめる。メインバンクが欠ければ銀行団は機能不全に陥りかねない。今回、ユニゾは銀行団と協議することなく文書のみで借り換えの要請に踏み切った。

急落する社債

加えて、残存する社債のリスクもある。複数の関係者によると、ユニゾ社債の引受先は、全国の信用金庫や信用組合など協同組織金融機関のほか、一部に地銀もあった。同社の借入先に信金や信組はないが、一部地銀は融資と社債の両方のリスクを取っているという。

日本格付研究所(JCR)は昨年12月、ユニゾの長期発行体格付けと債券格付けを非投資適格の「BB+」に 引き下げた。社債市場はすでに、同社の債務不履行リスクを織り込み始めている。

ブルームバーグのデータによると、27年11月満期の第12回社債や24年11月満期の第11回社債は、額面金額100円に対して20円台、22年11月満期の10回債も40円台に下落している。

複数の証券会社や運用会社の幹部によると、海外投資家勢の中に、ユニゾの社債を買い集めているヘッジファンドもあり、債権者集会の開催などを求めるとの見方も出ている。

ブルームバーグ・インテリジェンスの田村晋一アナリストは、地銀全体の経営について、政府の支援策などで企業倒産が歴史的低水準にあることやコロナ関連融資の拡大などで、収益は会社予想を上回る見通しだと指摘する。

その上で、「万が一ユニゾ融資が全額焦げ付いても、この1件だけで健全性を揺るがす事態には至らないが、銀行によっては無傷では済まないところも出てくるのではないか」と話した。

日本総研が語る「オープンバンキング」、海外動向に見る“銀行API”の論点とは(ビジネス+IT)

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※本記事は、2020年12月14日に行われた「NII金融スマートデータ研究センター・シンポジウム」での講演内容をもとに再構成したものです。一部の内容は現在と異なる場合があります。肩書は当時のものです。 ●「オープンAPI」の銀行のビジネスモデルへの影響 API(Application Programming Interface)は、システム間でデータをやりとりする仕組みだ。このAPIを公開し、企業間で自由にデータのやりとりを可能にしたのが「オープンAPI」である。 さまざまな企業間ですでにオープンAPIによるデータのやりとりが行われている。特に金融領域では2017年5月に成立した改正銀行法により、銀行に対して2020年5月までに(コロナ禍で10月に延長)オープンAPIを実装することが努力義務として課せられていたこともあり、この動きが加速している。 金融機関がオープンAPIにより銀行データとサービスを連携させ価値を生む「オープンバンキング」の潮流は世界的なものであり、銀行とフィンテック企業の間で、オープンAPIによるデータのやりとりが活発化している。翁氏は「銀行のビジネスに対する影響力が最も大きいのが、銀行のビジネスモデルへの影響です」と、次のように説明する。 「BaaS(Banking as a Service)やBaaP(Banking as a Platform)と表現されるような、銀行のビジネスをサービスとして提供する動きが活発化しています。たとえば、ドイツのソラリス銀行のように、フィンテック事業者にオープンAPIを提供することを目的とするような新しい銀行も、次々と登場しています」(翁氏) そこで期待されるのが、銀行間の競争の活性化だ。これまで銀行業は、競争の乏しい産業だといわれていた。「口座保有には慣性が働く」といわれ、一度、口座を作ると、それが動くことはほとんどなかったのだ。 「しかし、オープンAPIを活用し、預金者のデータを分析し、その意思決定をサポートするようなアプリケーションが登場すれば、預金者が口座をスイッチするような動きも活発化するかもしれません」(翁氏) 日本においては、2017年5月、銀行法が一部改正され、従来、家計簿アプリなどで銀行の預金情報収集に使われていたWebスクレイピング(Webデータ抽出)という手法が禁止され、代わりに銀行が提供するAPIの使用が推奨されることになった。 また、フィンテック事業者を登録制にし、安全を担保できる企業のみ事業が認可されることになった。その結果、安全性を確保しながら、APIでデータを利活用できる環境が整備されつつある。 ●オープンバンキング先進国、英国とオーストラリアの最新の取り組み 顧客の同意を得た上で、銀行が保有する顧客データをオープンAPIで連携・活用し、新たなサービスを生み出す取り組みが「オープンバンキング」だ。このオープンバンキングに、2014年頃から取り組んでいるのが英国である。 「英国は、大手4行のシェアが85%(2017年時点)という極端な寡占状態ありました。そこで、銀行間の競争を促進する目的で、日本の公正取引委員会に当たる組織がオープンバンキングの旗振り役となって、オープンAPIの導入を促したという経緯があります」(翁氏) 2016年には民間団体がセキュリティなどに関するルールを体系化してオープンバンキングスタンダードを提示し、2018年にはFDATA(Financial Data and Technology Association)という民間団体が課題を整理した。 「そこでは、顧客自身がデータの所有者であることを認めたうえで、サードパーティはサービス提供時に顧客の同意が必要であるとされました。そして、データを(1)顧客が提供するデータ、(2)取引データ、(3)付加価値がついたデータの3種類に分け、その共有方法も整理されました。さらに、顧客が損失を被ったときの銀行とサードパーティ間の損失負担ルールなども検討されています」(翁氏) 政府が主導して、分野横断的にデータ利活用を進めているのがオーストラリアだ。2017年には政府からレポートが公表され、データ利活用についての法整備の必要性が提言されている。 「これに沿う形で、2019年からはCDR(Consumer Data Right)銀行セクターに適用し、顧客情報を有効活用できるようにしました。CDRとは、個人や中小企業が事業者に対して、自己のデータを自己の指図にしたがって他社に提供するように求めることができる権利のことです」(翁氏) なお、情報を取得したフィンテック事業者も、顧客の指示にしたがって同様の情報を銀行などに提供する義務を負うという。

マスターカード、暗号通貨に対応へ…各国の中央銀行と連携してのデジタル通貨発行も視野に

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REUTERS/Soe Zeya Tun

マスターカードは、2021年に暗号通貨のサポートを開始すると述べた。

このクレジットカード会社は、暗号通貨の立ち上げに関して主要な中央銀行に「積極的に関与」している。

多くの暗号コインはコンプライアンスが不十分であるため、同社がすべての暗号通貨をサポートするわけではない。

マスターカード(Mastercard)は2021年中に、顧客が同社のネットワーク上で暗号通貨を使用できるようにする予定で、デジタルトークンを採用する企業の仲間入りをすることになった。

「現在当社は、暗号通貨と決済の未来に向けて準備をしている。2021年からは、一部の暗号通貨をネットワーク上で直接サポートすることにした」とデジタル資産担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのラジ・ダモダラン(Raj Dhamodharan)はブログで述べている。

今週、テスラ(Tesla)は15億ドルをビットコイン(Bitcoin)に投資したことを明らかにし、まもなく同社製品の支払い手段として受け入れを始めると述べた。

マスターカードはすでに、カード会員が外部プラットフォームを介してデジタル資産を利用することを可能にしている。しかし、これは取引が実際にはマスターカードのネットワークを経由しないことを意味する。しかし、今、同社はより多くの加盟店がデジタルトークンを受け入れることができるようにすることで、暗号通貨をサポートすることを目指している。これにより「消費者と加盟店の両方が、購入を行うために暗号通貨と従来型通貨の間で行き来しなくてよくなる」とダモダランは述べている。

同社はまた、世界中の中央銀行と「積極的に協力」して、人々が新しい決済方法を利用できるように、新しいデジタル通貨を発行する可能性があると述べた。

マスターカードは、現状は多くの暗号通貨がコンプライアンスを強化する必要があるため、すべての暗号通貨をサポートするわけではないと述べた。 「消費者保護とコンプライアンスに焦点を当てた当社のデジタル通貨利用の原則に基づいて、どの暗号資産をサポートするかについて慎重に検討する」

同社は、自社ネットワークでの使用に適した暗号通貨をまだ指定していない。

[原文:Mastercard will allow merchants to accept select cryptocurrencies on its network later this year]

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)