台湾ってどうして国じゃないの?
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熱々のショーロンポーに完熟のマンゴーなど、おいしい食べ物で有名な台湾。人口2300万余りに対し、2018年には5分の1にあたる、のべ475万人が日本を訪れるなど親日派が多いことで知られる。日本からも200万人近くが訪台したほか、海外の修学旅行先としては最も多い年間5万人以上の生徒が訪れるなど往来は年々活発化。2011年の東日本大震災のときは200億円以上の義援金などで支援してくれた台湾だが、実は台湾は日本にとって「国」ではない。
1972年に国交断絶も“重要なパートナー”
「国」は、一般的に▼住民、▼領土、▼主権(政府)があることに加えて、ほかの国から承認される必要がある。日本は1972年の国交正常化で中国を承認する一方、台湾とは外交関係を断絶。このときから台湾は日本にとって「国」ではなくなった。
しかし、日本は窓口機関「日本台湾交流協会」を、台湾は「台湾日本関係協会」をそれぞれ設立して貿易や文化などの分野で「重要なパートナー」、「大切な友人」である台湾との実務的な関係を続けてきた。
台湾を「国」と認めているのは過去最少の15か国
現在、台湾を「国」と承認し、外交関係を結んでいるのは中南米や南太平洋などに点在する15の国々。過去最少だ。2016年の蔡英文総統就任時、台湾と外交関係にある国は22か国あったが、中国の圧力によって次々に断交し、中国と国交を樹立している。
中国が受け入れを迫る“1つの中国”とは
中国が台湾に圧力をかける理由。それは、「1つの中国」の受け入れを迫ることだ。1949年、中国大陸で国民党との内戦に勝利した共産党が「中華人民共和国」を建国にしたのに対し、「中華民国」で独裁体制を敷いた国民党は台湾に逃れてからも「中華民国こそが中国の正統な政権だ」と主張。両者は互いに主権を認め合っていないものの、1992年に「中国大陸と台湾はともに1つの中国に属する」という原則を口頭で確認したとされている。ところが、台湾でその後、国民党に代わって政権を担った民進党は党の綱領で「台湾独立」をうたい、「1つの中国」を受け入れていない。
「台湾独立」ではなく「現状維持」を掲げる蔡氏だが、将来の統一を目指す中国の習近平国家主席はなんとしても「1つの中国」を認めさせる方針で、今後も外交だけでなく、軍事や経済などさまざまな手段を使って圧力をかけていくだろう。これに対し、日本は中国と台湾をめぐる問題について、当事者間の直接の話し合いを通じて平和的に解決されることを希望するという立場だ。
「米軍は中国軍より弱い」とアメリカが主張する狙いは?(遠藤誉)
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米アジア太平洋軍の司令官は「米軍は中国軍より弱いし、中国は6年以内に台湾を武力攻撃する」と言っている。本当か?アメリカが、自国軍が弱いと主張する目的は何か?それは日本にどういう影響を与えるのか?
◆米軍が中国軍に負けると主張するアメリカ
2020年9月1日、アメリカ国防総省(DOD)が「中華人民共和国を含めた軍事・安全保障に関する2020年版報告書」を発表した(DOD Releases 2020 Report on Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China)。
報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘した。アメリカは元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからだ。
したがってもし米中が軍事衝突に至った場合、米軍は中国軍に勝つことができない恐れがあると報告書は書いている。中国軍が中距離ミサイルの大量発射という手法で、グアムや在日米軍基地を攻撃した場合に、米軍には抵抗手段がないというのが報告書の見方だ。
さらに、中国軍が現在200発以上保有する核弾頭数が、今後10年で2倍以上になる可能性があり、このうちアメリカにまで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)に装填する弾頭数は今後5年で200発以上に膨れ上がるだろうとしている。
海軍力に関しては、米軍の水上艦や潜水艦の数が293隻であるのに対して、中国海軍はすでに350隻を有しており、中国海軍の力は「世界最大である」と高く評価している。
このままではインド太平洋地域における米軍の優位は保たれないと強い危機感を表明した。
そのインド太平洋に関して、今年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が米上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。たとえばこちらのニュースや、こちらの情報で確認することができる。
一方、Clinton Hinote(クリントン・ヒノテ)という米空軍中将は、3月11日、米中両軍の軍事力に関するシミュレーションを行った結果、「ウォーゲームの傾向は、単に米軍が敗けるというだけではなく、敗けるまでの時間が年々短くなってきて、最近では瞬時に米軍が中国軍に敗ける傾向にある」という趣旨のことを言っている。
本当だろうか?
とても中国軍の全体的軍事力がアメリカを凌駕するとは思えないのだが。
◆中国は中国軍の実力をどう見ているのか?
では、中国自身は中国軍の実力をアメリカと比較して、どのように見ているのか。
アメリカ国防総省の報告書を知り、少なからぬ中国人が本気で「中国の軍事力がアメリカを上回ったのか」と思いこんでいる実情に関して、軍事評論家の張召忠氏(国防大学教授、元海軍少将)は「中国軍の実力に比べて、米軍の実力は遥かに上で、米軍のその地位は揺るぎない」と、今年2月に語っている。
彼の主張を書くと、概ね以下のようになる。
1.どうやら勘違いしている人が多いが、それは正しい認識ではない。
2.たしかに中国は長い時間をかけて大きく発展を遂げることは出来たが、しかし「アメリカが、中国の軍事力がアメリカの軍事力より強大だ言うこと」と、「実際にアメリカの軍事力が中国より弱いのか」ということとは全く二つの異なる概念だ。
3.そもそも軍事費から考えても、2018年までアメリカの軍事費は群を抜いて世界トップで、7000億米ドルに達している。これは2位から20位までの全ての国の軍事費の合計よりも(アメリカ一国だけで)上回っているのである。これは、どんなに恐ろしいデータであることか。
4.ピンと来ない人には、空軍の戦闘機の数を例に挙げれば、理解できるかもしれない。たとえばアメリカの戦闘機の数は13000機だが、2番目に多いロシアはわずか5000機しか持っていない。それを見ただけでも軍事力の差は歴然としている。
5.総合的な戦闘力に関して、アメリカは数において他国を圧倒しているだけでなく、そのレベルにおいて絶対的な優位性を持っている。たとえば世界で最も先進的な第5世代の戦闘機を300機以上持っているだけでなく、核兵器や強力な空軍と科学研究の強さは、まちがいなく世界最先端のレベルを有しており、圧倒的な軍事力を有している。
6.もちろん我々中国も確実に大きな発展を遂げてきたが、しかし中国の真の発展を確実なものにするには、他の国の軍事力に関して客観的な視点を持たなければならない。そうしてこそ本当に中国の発展に寄与することができるのである。(引用はここまで。)
概ね以上だ。
これが現実であると思う。総合的に見て、中国の軍事力の方が強いはずがない。
◆米軍側が「米軍は中国軍よりも弱い」と主張する目的は何か?
では、なぜ米軍側は自国の軍事力が中国軍よりも弱いと言い張るのか?
どのような国でも、普通は「我が国の軍事力はこんなに強い」と自慢するものだ。
したがって、「わが軍はこんなに弱いです!」と自慢したりする背景には、よほどの目的があると考えなければならない。
まず昨年の国防総省(ペンタゴン)リポートは、そもそも「議会用」に発表されたものなので、米軍側が「国防費の予算を獲得するために、議会に向けて発信したもの」と解釈することもできる。
しかし、それは国際社会にもオープンにされるので、中国を含めた多くの国の知るところとなる。
となると、もっと別の目的があるだろうことが考えられる。
それを理解するには、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したデービッドソン司令官が、公聴会で「(中国が)やろうとしていることの代償は高くつくと中国に知らしめるために、オーストラリアと日本に配備予定のイージス・システムに加え、攻撃兵器に予算をつけるよう議会に求めた」ということに注目しなければならないだろう。
すなわち、「中距離弾道ミサイルの日本配備」を求めているということだ。
前述したように米露間にはINF廃棄条約があったため、中国軍が中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていなかった。そこでトランプ元大統領はINF廃棄条約から脱退し(2019年8月2日)、アメリカも自由に製造することができるようにして、ポストINFを配備してくれる国を探していた。韓国の文在寅大統領は習近平に忖度して断ったが、オーストラリアの首相は親中派のターンブル氏から嫌中派のモリソン首相に替わったので、候補地としてはオーストラリアと日本ということになる。
6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものだ。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発する。
もっとも、米軍全体の軍事力は中国軍より強かったとしても、第一列島線の戦闘において中国は、いざとなれば全ての軍事力(中国人民解放軍200万人以上)を投入することができるのに対して、有事の時にアメリカが投入できる軍隊は30万人にも満たない。それも在日米軍や在韓米軍および第七艦隊も含めてのことだ。これは全米軍の20%程度で、中国が100%の兵力を使えることと、中国には航空母艦からでなく「陸地にあるミサイル全てを使うことができる」というメリットがあることを考えれば、たしかに米軍は弱いことになる。
となればなおさら、日本には以下のようなことが求められていることになる。
(1)ポストINFとして中距離弾道ミサイルを日本に配備すること。
(2)憲法を改正して日本が軍隊を持つこと。
(3)在日米軍の経費を日本が増額すること。
(4)何よりも残り80%の米軍に代わって日本が矢面で戦う覚悟を持つこと。
日本にとっては実に厳しい現実が目の前に横たわっている。
◆中国が台湾を武力攻撃するのは、どういう場合か?
それでは、中国は本気で台湾を武力攻撃するだろうか?
アメリカが日本に「脅し」をかけている前提が、正しいか否かを先ず考察してみなければならない。詳細なシミュレーションはまた別途行うとして、中国が台湾を武力攻撃する場合をストレートにひとことで言うなら、「台湾政府が独立を宣言しようとした時」である。
台湾政府が独立を宣言しようとする動きに出なければ、中国(大陸、北京政府)は台湾を武力攻撃することはないだろう。
理由はいくつかある。
その一:たとえ上記のような米軍に関する不利があろうとも、中国軍の軍事力はまだ不十分で、米軍に完全に勝利できるという保証がない。負け戦をすれば、一党支配体制は崩壊する。
その二:戦争を起こせば、人心が乱れて社会不安が増す。社会不安が増せば、一党支配体制は揺らぐ。
その三:戦争になれば台湾の無辜の民の命を奪うことになり、国際社会からの厳しい制裁を受ける。その制裁の程度は天安門事件や香港問題あるいはウイグルの人権問題の比ではなく、中国は孤立して中国経済が成立しなくなる。そうすれば一党支配体制が崩壊する。
このように、いくつもの理由があるため、台湾政府が独立を叫ばない限り、中国が積極的に武力攻撃することはない。
ならば、なぜ現在、台湾周辺で中国軍の軍事活動を活発化せているかと言うと、アメリカが台湾を支援して政府高官を台湾に送り込んだりしているからである。活発な軍事活動は2020年8月のアザール厚生長官の台湾訪問から始まった。だからアメリカと、それを喜んで受け入れている蔡英文総統に威嚇しているに過ぎない。
ではトランプ政権はなぜアザールを訪台させたかと言うと、そこには米中のハイテク競争がある。これに関しては、追ってまた機会を見て分析する。
(なお、中国が軍事活動を活発化させたもう一つの理由に、香港デモに影響を受けた台湾独立派の動きがある。これは習近平の自業自得で、書きたいことが多いが、文字数の関係上、別途考察することとする。)
台湾「国旗」、米政府サイトから消える
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【台北=伊原健作】米政府の公式サイトから台湾が「国旗」とする「青天白日満地紅旗」が相次ぎ削除され、台湾で波紋が広がっている。台湾当局は米政府に「強い不満」を表明。米側は「対台湾政策は変わらない」と回答したというが、国際社会で台湾を孤立させようとする中国の動きが強まるなか、米国が中国に一定の配慮をしたとの見方もある。
複数の台湾メディアによると2017年10月以降、米国務省領事局や米通商代表部(USTR)のホームページで、他国・地域を紹介するページから台湾の「国旗」が相次ぎ消えた。ただ領事局のページでは台湾以外の国・地域の旗も表示されなくなったという。
台湾は「中華民国」という主権国家を名乗り、「国旗」に青天白日満地紅旗を用いている。もっとも、中国の圧力により台湾を外交承認する国は20カ国に減り、日米などとも正式な国交はない。
中国はあらゆる場面で台湾の「国旗」が使用されることに反対してきたが、米政府のサイトでは最近まで使われていたという。米国は東アジア地域での中国の台頭を警戒し、安全保障における台湾の役割と存在を重視してきた。トランプ米政権も1月19日に発表した「国家防衛戦略」で、中国をロシアとともに「戦略上の競争相手」と位置づけている。