駐アフガニスタン英国大使、イギリスに帰国 英軍のアフガニスタン撤収完了と共に

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駐アフガニスタン英国大使、イギリスに帰国 英軍のアフガニスタン撤収完了と共に

2021年8月30日 12:50

画像提供, PA Media 画像説明, カブール空港でイギリス人やアフガニスタン人の退避を支援していたサー・ローリー・ブリストウ大使

駐アフガニスタン英国大使のサー・ローリー・ブリストウは29日午前、イギリス人を乗せてアフガニスタンを離れる最後の便のひとつで帰国した。イギリス政府は28日、アフガニスタンからの退避支援作戦を終え、英軍をはじめ全ての英政府関係者もアフガニスタンから出国した。英首相官邸が明らかにした。

ブリストウ大使は、英オックスフォードシャーのブライズ・ノートン英空軍基地に到着した。大使たちを乗せた輸送機はアラブ首長国連邦(UAE)を経由して、イギリスに戻った。さらに、軍人や文民を乗せた輸送機も続いた。武装勢力タリバンが首都カブールを掌握して以降、大使はアフガニスタンから避難しようとする人たちの出国手続きをカブール空港で続けていた。

最後の英空軍機の出国によって、20年間にわたる英軍のアフガニスタンでの作戦行動が終わった。英政府は今月14日以降、1万5000人以上をアフガニスタンから退避させた。

イギリスの退避作戦を指揮したサー・ベン・キー海軍中将は、同盟諸国の市民や協力者全員が出国できるまでは、退避作戦が成功したとは「なかなか言いがたい」と述べた。

ブライズ・ノートン空軍基地であいさつした中将は、「各国が協力した見事な国際的作業」だったものの、「お祝いするようなことではまったくない」と述べ、アフガニスタンに残してきた人たちを思うと「悲しみ」がこみあげると話した。

中将はさらに、過去2週間の退避作戦でイギリス軍は多くのことを達成したものの、「必死に退避しようとしていたのに、我々がどれほど力を尽くしても避難させられず、本当に悲しいことになってしまった人たちがいる」と認め、タリバンが定めた8月31日の撤収期限のせいで「過去20年の間に実に見事に、そして勇敢に我々を助けてくれた人たち」をもっと退避させられなかったと話した。

ボリス・ジョンソン英首相は、イギリスの撤収完了について、「今まで生きてきてこれほどの任務がこのように完結するのを見るのは初めて」だと評価した。

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大使館はカタールへ

中将はさらに、カブールから帰還した英軍兵たちの写真から、いかに「困難で必死な状況で」、「この2週間、全力を尽くし」たか、いかに「疲れ切っている」かが分かると指摘。兵士たちは「厳しい環境で宿営し、携行食を食べながら」任務にあたり、「彼らを駆り立てるのはただひとつ、退避資格のあるアフガニスタン人とイギリス人をできるだけ多く退避させようという動機だけだった」と述べた。

ブリストウ大使は、イギリスのアフガニスタン大使館は「当面」はカタールに設置されて活動するものの、できるだけ早く業務を再開すると説明。「私たちは引き続きアフガニスタンの人たちを支援し続ける」と大使は述べた。

空軍基地で取材したBBCのジェイムズ・レノルズ記者は、ブリストウ大使の帰国を記念する式典は特になく、フィリップ・バートン外務次官に出迎えられると、同僚の外交官たちとターミナル・ビルに入っていったと伝えた。

イギリスの駐アフガニスタン大使がイギリス国内の空軍基地に降り立つその姿こそ、カブールにおけるイギリスの任務終了を明確に物語るものだったと、記者は述べている。

画像提供, PA Media 画像説明, 大使と同じ便でアフガニスタンから帰国した英軍兵士たち

英首相官邸によると、イギリス政府が退避させた1万5000人超のうち、約2200人は子供で、生後1日の赤ちゃんもいた。空路で退避したイギリス人とその家族は約5000人、イギリス政府職員だったアフガニスタン人とその家族や、タリバンから迫害される危険のある人たちは、計8000人超だったという。

2006年から2009年にかけて英軍参謀総長だったダナット卿はBBCの朝の情報番組に対して、「軍事的な章がひとつ終わる、大きな出来事だ。我々が望む形では、この一幕は終わらなかった」と述べた。

ダナット卿は、アフガニスタンにおける英軍の20年間の作戦行動について「一連の戦略的ミス」を検証する作業が必要だと指摘。今回の退避作戦もミスの一つで、数カ月前から開始し「もっと落ち着いて熟慮した形で」実行できたはずだと話した。

米軍は撤収期限の8月31日まで、退避支援活動を続けている。

イギリスに避難したアフガニスタン人は

イギリス政府は、アフガニスタンを逃れた人たちの再定住計画「温かい歓迎作戦」を、新たに発表した。これは2014年から2020年にかけてシリア内戦を逃れてイギリスへ到着したシリア難民に向けて、英政府が用意した定住計画を模したものになる。

イギリス社会での生活に慣れるための支援、心的外傷への対応、無料の英語教育のほか、医療や教育、住宅や就労などについて、公的な支援を提供する。

イギリス政府は、イギリス政府のために働いたアフガニスタン人のための再定住計画と、アフガニスタンの女性や子供や少数者を対象にした再定住計画を用意している。

イギリスに到着したアフガニスタン人の主な待遇は次の通り――。

アフガニスタン 米軍が車両を空爆 子ども含む民間人に死傷者か

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アフガニスタンからの撤退期限が迫るなか、アメリカ軍は首都カブールで爆発物を積んでいたとみられる車両を空爆したと発表しました。

一方、アメリカのメディアは、この攻撃で子どもを含む民間人に死傷者が出たと伝えていて、現地での混乱がさらに深まることへの懸念が高まっています。

アメリカ中央軍は29日、声明を出し、アフガニスタンの首都カブールで車両を標的に無人機による空爆を行ったと明らかにしました。

空爆は、カブールの空港に差し迫っていた過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織による攻撃の脅威を取り除くためだったとしています。

この攻撃について、アメリカのCNNテレビは地元の人の話として、空爆があった場所は住宅街で、子ども6人を含む一家9人が巻き添えになり死亡したと伝えたほか、AP通信は子ども3人が死亡したとしています。

アメリカ中央軍は日本時間の30日朝、追加の声明を発表し「民間人に死傷者が出たという報道は認識している」としたうえで、「車両の破壊に伴う大規模な爆発は車に大量の爆発物が積まれていたことを示しており、これにより、さらなる死傷者が出た可能性がある」と指摘し、詳しい調査を行っていると明らかにしました。

アメリカ軍は、カブールの空港近くで起きた自爆テロへの報復として、アフガニスタン東部で無人機による攻撃を行ったばかりで、現地での混乱がさらに深まることへの懸念が高まっています。

AP通信が配信した、アメリカ軍の無人機が空爆した車両とされる映像では、建物の近くに焼け焦げて大きく壊れた車両が映っているのが確認できます。

市民への米軍の「誤爆」、報復テロの火種に 遠い平和 [アフガニスタン情勢]:朝日新聞デジタル

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アフガニスタンで29日に実施した対テロ作戦の空爆をめぐり、米軍が民間人に犠牲者が出た可能性を認めた。民間人の巻き添えは、憎悪の連鎖を生みかねない。米軍は調査をするとしているが、イスラム主義勢力タリバンが支配するなかでの調査は困難な状況だ。

住宅街の中庭にがれきが散らばり、黒こげの車の残骸が横たわる――。アフガニスタンの地元メディアは29日、米無人機(ドローン)の空爆の被害を受けたとされる住宅街の様子を動画で伝えた。周囲の家の窓ガラスは吹き飛び、壁には無数の破片がめり込んでいた。

「爆撃された弟は、貧しい人たちに大豆を配ってきたNGO職員です」。兄を名乗る男性が地元テレビ「トロ」の取材に応じ、弟は過激派組織「イスラム国」(IS)とは何の関係もない一般市民だと訴えた。車の中で遊んでいた子どもたちも犠牲になったという。

同国では市民の犠牲をいとわない空爆が20年間続いてきた。過激派の居場所をつかんだ米軍が、周囲の住民もろとも爆撃するケースが目立つ。遺族は泣き寝入りを強いられてきた。

国連アフガニスタン支援団の統計などによると、2001年から今年6月末までに犠牲になった市民の数は約4万9千人に上る。その大半は戦闘やテロによるものだが、空爆の犠牲も多い。

米国のトランプ前政権が空爆を強化した19年には一時、米軍やアフガン政府軍に殺された市民の数が、タリバンなど武装勢力に殺された市民を上回っていた。

「米国は侵略者」 タリバンの勢力拡大を招く

米軍が空爆の事実を認めても…